同じ目線で生きられない世界

 

スクールカースト

これを聞いてもしかしたら「たかだか学校内での上下関係みたいなことでしょ」と思われた方もいるかもしれない。

しかしこの単語にはとてつもなく恐ろしい意味合いが含まれているのである。

 

因みにウィキペディアには

スクールカースト(または学校カースト)は、学校において自然発生する生徒間の序列、また、序列の近い生徒らが小集団を形成し、学校社会が階層化しているという仮説である。上下関係が固定化することから、ハラスメントの原因になっていると考えられている。」(一部抜粋)

と記載されている。

 

私は高校生活の3年間、まさにスクールカーストの中で生きていた。

教室には常にカーストの頂点にいる女子がいて毎日教室に入ると私の「人権」は無くなりカーストの底辺の人間になる。

特に酷かったのは3年生の時だった。

カーストの頂点にいるのは主犯格の子を筆頭に3人いて例えば私が友達(女の子)と話していてその子の横を通り過ぎると

「あいつら付き合ってんじゃね?」

とクスクス笑いながら聞こえるような声でからかわれたり、私の携帯がどこかへ行ってしまった時、その子達にゴミ箱へ捨てられたこともある。

とにかくその子達の座っている席には近付かないように、目立つ行動をしないように、まるで「空気」になるかのように、休み時間は机に突っ伏せて存在を消していた。

そしてこの頂点にいる子達はクラスメイトだけでなく先生にも容赦しない。

授業中はずっとその子達は大きな声で話しているので先生の声がかき消されてしまう。

最初は先生は軽く注意するのだが一向に止める気配が無いので声を荒げて注意してくる。

するとその子達は

「うるせぇのはてめぇの方だろうが!!邪魔すんじゃねぇ!!!」

と反論し、机を蹴った。

そこから言い合いになり、最終的に先生は泣いてしまう。

そんなことが日常茶飯事なので授業にもならないし「教師」という立場ですらカーストの頂点にはなれないのだと更に恐怖を覚えた。

 

ここで「そんなに辛いなら高校を辞めればいいのでは?」

と思われるかもしれない。

だが辞めるという選択はそうそう簡単にはできないのだ。

私の場合裕福といえる家庭ではなく、本来は公立の高校に進学する予定だったのだが不合格という結果になり、親には特にこだわりがないのなら2次募集している高校を受ければいいじゃないかと言われていた。ただ2次募集をする高校というのは1次募集で定員以下しか応募されなかった高校で、差別的な言い方になってしまうが所謂底辺の高校しかないのだ。「授業は気が向いた時にしか来ない」「例え来ても授業中はずっと化粧や携帯で遊んでいる。体育の時間は勝手に遊んでいる」そんな噂しか聞かない高校で3年間過ごす事を想像するだけで恐ろしかった。

そのため滑り止めで受かっていた私立の高校に行かせて欲しいと泣きながら土下座をして受かっていた高校のうち一番学費が安い所に行かせてもらえることになった。

そんな背景があるのでとてもじゃないが「高校を辞めたい」なんて

言うことはできなかった。

何度もたまに家に届く通信制の高校のDMを見ては泣きそうになっていた。でも言えない。ただでさえお金のない家庭から何十万も出してもらって今の高校に通わせてもらっているのだから。

 

そんな毎日を送っていたある日、私の友達がカースト上位の彼女達のターゲットになってしまった。

内容は

・毎日後ろの席から(その子の後ろの席が彼女たちの席だった)足でその子の椅子を蹴る

・何かにつけてその子の悪口を大きな声で話してからかう

この様なことが毎日行われていた

 

こんな時に助けるべきである同じグループのみんなは最初は心配していたのだが、その状態が続いていくと「考えてみたらそんなことをされてうじうじしてるって弱すぎ。ムカつく」という訳の分からない理由から同じグループのみんなからも無視される様になってしまったのだ。

因みにこの同じグループ内にもカーストがあり、頂点にいる子の機嫌で周期的に無作為に誰かが無視をされ、悪口を言われていた。もちろん私もその1人だった。その時に私の中では同じグループ=友達だと思っていたのだがただただお昼に一緒にお弁当を食べるだけの関係なんだな、と理解はしたがならば何の為に一緒に食べているのか?と疑問でもあった。

そんな誰からも助けがない状態で過ごしていた彼女はある日授業中、急に席を立ち泣きながらドアを開け走ってトイレに駆け込んだ。

教室中がざわめき、私を含む何人かは後を追うようにトイレに向かい、トイレの個室に入った友達を「どうしたの?!大丈夫だから出てきて!」と叫びながらドアを叩いた。

 

誰がどう見てもどうしたのなどと聞くほうがおかしいくらい何が起こっていたのかはわかっているし当たり前にもう彼女は限界だったのだ。

 

後ろの席からはからかわれ、一緒にお弁当を食べる仲間からはムカつくと無視をされる。そんな毎日を過ごしていれば誰だっておかしくなってしまう。

 

そしてトイレから出てきた彼女は次の日から「おはよう」と言っても俯いたまま何も言わず常に首を下げ話しかけられても蚊の鳴くような声で「あ、すみません…」と敬語でしか話さなくなってしまった。

 

元々彼女はとても元気な子で同じグループの子といつも笑いながら沢山話す毎日を過ごしてきていた。

そんな子が一変した。

一変した彼女を前記の同じグループの頂点に子はまた心配し始めていたが、また段々と「考えてみたらそんなことで暗くなるなんて弱い。そんなんだからダメなんだ」

と、彼女を無視する様になった。

 

それは卒業式を迎えるまで約半年続いた。

 

私は彼女を守ることが出来なかった。彼女を守ることで今度は自分がターゲットにされてしまうことを恐れてしまったからだ。

自分の保守の為にどん底にいた彼女を助けることが出来なかった情けない自分を責めた。そして卒業をして日が立つ度にどんどん申し訳ない気持ちが蓄積していった。

 

月日は経ちお互い大学生になってすぐの頃彼女を誘ってご飯を食べに行った。

そしてその帰りの電車の中で私は高校の時何もしてあげられなくて本当にごめんなさいと謝罪した。

するときっと彼女の中で最高に気を使った笑顔に近い表情を作りながら何も言わなかった。

私は彼女から笑顔を奪ってしまった。やすやすと許されることではない事をこの時痛感した。その後何度かこちらから連絡をしていたのだがある日を境に連絡先を変えてしまったらしく連絡を取らなくなり今に至る。

どうか高校時代の彼女を忘れさせるくらい楽しい大学生活を送っていますように、社会人になっても笑顔を絶やさない彼女でいてくれていますようにと今も心から願っている。

 

そして今スクールカーストの底辺にいて毎日苦しんでいる子に学校が全てではない、教室から逃げてもいいんだよと全力で言ってあげたい。

私の様に金銭的な理由で我慢を強いられている子もいるかもしれない。

私の高校時代はまだ携帯電話が普及し始めたくらいの時期だったのでSNSなんて無かったし現実の世界にしか助けを求められなかった為相談できるのは家族か教師くらいしかいなかった。

しかし今この時代はネットの世界に沢山手を差し伸べてくれる機関や人がいる。だからどうか同じ様な環境下で我慢している子がいたら勇気を出して親や先生に言いづらかったら電話で相談できる機関でもいい、とにかく誰かに相談して欲しい。

参考までに一つサイトを載せておきます

https://www.futoukou-navi.com/note/kihon/1156.html

このような様々な相談機関の一覧が載っているサイトなどが沢山あるので調べてみて欲しい

(このサイトは不登校を主にしたタイトルではあるが色々な相談が出来る所が沢山記載されています)

 

スクールカーストは単なる学校内、学生時代の出来事で片づけられるものではない。いじめと同等な行為でありその傷は学校から解放されても消えることはないのだ。

男女平等な社会を目指している日本において将来を担う学生が平等に勉学に打ち込める様な学生環境、学生生活を送れていないのはおかしい。

どんな子も同じクラスメイトと同等に話せ、安心して勉強が出来る環境、それが学生生活であると声を大にして言いたい。